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モダニズム建築をゴミとして捨てるのか

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今の尾道市は「日本遺産」の都市に値しない/CityhallProblem10


今の尾道市は「日本遺産」の都市に値しない/CityhallProblem10

いつの日か「日本遺産」にふさわしい尾道になると信じて


南海トラフ巨大地震の4mの津波が来る海辺に非常識な防災拠点の新築、 液状化する敷地に防災拠点の新築、しかも免震工法はあり得ない!!



平谷尾道市長が合併特例債延長にともない、あせって巨額な借金で巨大な新庁舎建設をおしすすめるのはなぜか?年間1,000人を超える急速な人口減少が予測され、地域経済の縮小と地方交付税の減少による尾道市の財政悪化が懸念される今、現状の1.7倍という巨大な市庁舎を新築するべきではない。市民のためにある行政が、津波や巨大地震から「市民の生命を守る」ための真の防災政策を考えず、市庁舎新築を優先したのは、市民のための行政としてはあり得ないことです。
平成25年7月から始まった尾道市庁舎整備検討委員会では、平成26年12月までに新市建設計画の変更を間に合わせようと、耐震改修案の理解できないほど高額な建築費のデータを提示し、新築案に誘導していることを、公開された議事録が明らかにしています。そして平成26年9月の市議会本会議で、耐震性能調査もしていない公会堂の解体を決議し、市庁舎新築を決定付けました。そして新築予定の地盤が液状化する可能性があることは、この時点では予測していません。地質調査もせず、公会堂の耐震性能の調査もせず、合併特例債を利用したいために、免震構造の市庁舎新築にひた走ったというのが真実ではないでしょうか。

●誤解される10月21日付けの「杭と液状化」報道


平成27年3月には完了していたはずの新市庁舎敷地の地質調査の結果を、尾道市は10月に尾道市議会予算委員会の要請を受け、初めて公表しました。市庁舎の敷地は「液状化の可能性がある」というものです。
尾道市が発表したという新聞報道記事では、「市庁舎本館棟と公会堂は建物を支える、土中に打ち込んだ杭が強固な基盤まで届いてなく、震度6強の地震にみまわれた場合には、地盤は液状化し、建物は傾き、最悪、倒壊の怖れもある」と報じています。まるで新築案だけが安心で、耐震改修案では液状化に耐えられないように報道されていますが、これは誤りです。尾道市が進める新築案も耐震改修で耐震補強された場合も、液状化対策は十分ではありません。国土交通省は、防災拠点で液状化する場合は土壌改良が必要だと指摘しています。そして市庁舎のライフラインの途絶を防ぐ対策も求めています。液状化防止対策をしなければ、庁舎は残っても防災拠点としての機能を失うことになるという指摘がされています。耐震改修による耐震補強と液状化防止対策は十分できるのです。今の尾道市は「日本遺産」の都市に値しない/CityhallProblem10


●4mの津波も想定される南海トラフ巨大地震


現在進めようとしている市庁舎新築計画では、最悪を考えれば、気象変動による海面の上昇と予測される津波に対応できず、免震装置へ海水が流入することを防ぐことはできないでしょう。
そのため、免震装置への海水の流入と余震時の長周期地震動により、尾道市がすすめる免震工法の市庁舎は、倒壊するリスクがあることは否定できません。さらに尾道市のいう防災拠点として機能させるためには、周辺の液状化対策も十分に行う必要があり、市庁舎新築計画の工費がますます増大することは明らかです。この計画は阻止すべきです。
そもそも海辺にあって液状化する地盤に巨額な免震構造の市庁舎を新築するという計画は、市民の安心・安全なまちづくりとはほど遠いものです。当初60億円ともいわれた工事費が、現在70億円となっており、液状化と東京オリンピックによる建築資材の高騰が新築工事費をさらに増大させることになることは、誰もが予想できることでしょう。


●市庁舎本館の杭は、現状で十分。フレーム補強でさらに万全に。


1960年に建てられた尾道市庁舎本館(1960年築)は、同年4月5日の『尾道市政だより』によれば、12メートルの杭を422本、10メートルの杭を15本、計437本もの杭を打ち込んだとあります。当時の写真をみると、この杭はコンクリートのものです。また公会堂(1963年築)の場合は、『広報おのみち』(1963.3.15)「公会堂建設の歩み」に「埋立地に第1号のコンクリートクイを打ち込む」とあり、やはりコンクリートの杭が使われています。
現在、尾道市は404本、深さ11.72メートル、杭は木製であると推測していますが、その根拠は示されず、信頼性を欠く報道です。
いずれにせよ、現状の杭の数と深さは十分なものと考えられます。もし杭が足らず、深さが不足していたら、建物は完成後すぐに沈下し始めたはずです。けれども尾道市庁舎本館・公会堂は50年を越える長期にわたり、まったく沈下していません。広島大学の地盤・建築基礎工学の専門家は、このことが「400本を越える杭が建物の荷重を十二分に支えている証拠」であり、「建設後55年を経過した現在では、地盤が踏み固まっている可能性が高い」と話しています。
実際に地震が発生した場合には、建物は横からかかる力を受けとめる必要があります。
現庁舎・公会堂を壊さず、耐震改修することを訴えてきた私たちが考える計画では、耐震性を確保できない増築部分を取り壊し、市庁舎本館の北側にフレームをつくって補強することで、この横からの力に耐える十分な耐震性能を確保します。フレーム補強の部分の地下基礎杭は、本庁舎の杭が打ち込まれている地盤より深く、28mの深さの花崗岩に届くように打ち込みます。地震の揺れに耐えるためには、これで十分なのです。今の尾道市は「日本遺産」の都市に値しない/CityhallProblem10


●市庁舎本館・公会堂の杭の深さと
横浜のマンション杭打ち深さ不足は、まったく違った問題


尾道市庁舎本館(1960年築)の杭うちは400本以上が打ち込まれ、本館西側の増築棟(1972年築)は、12本の杭が地下25mの地盤まで打ちこまれています。市庁舎本館の杭打ち本数が、増築棟より大幅に多いのは、杭1本が受け持つ荷重を少なくするためです。そのため、杭の打ち込まれる深さは浅くなります。
建築基準法改定後に造られた増築棟は、本館の2分の1の重さを12本の杭で支えていますから、1本の杭が支える重さは本館の30倍以上となり、より硬い地盤の25mまで杭が打ってあるということです。
最近、話題となっている杭うち深さ不足問題の横浜のマンションは、市庁舎本館の西側増築棟のように杭の本数が少なく、深い強固な地盤まで杭が達していなければないのです。その杭が十分な深さまで打ち込まれていなかったため、地盤が建物の重さに耐えかね、沈み建物が傾いたというものです。尾道市庁舎本館の杭が打ち込まれている12mの深さは、本館の重さを400本以上の多くの杭で十分ささえる地盤まで到達しているのであって、横浜マンション問題とはまったく意味が違います。
市民のための行政であるならば、新築計画を止め、市庁舎本館を耐震改修し、尾道の風土・歴史を後世に守り伝えること。そして巨大地震に備え、「市民の生命を守るため」の真の具体策が何よりも先決です。
市庁舎本館の耐震改修は、尾道市が新築するという市庁舎と同等の耐震性能を確保し、液状化防止対策も可能で、しかも新築予算を大幅に縮減することができるのです。
私たちは、建設費を安く抑えられる利点だけでなく、歴史的・文化的にも価値の高い尾道市庁舎・公会堂を保存改修することで、尾道の風土・歴史を後世に守り伝えたいと考えています。
そして、南海トラフ巨大地震に備え、やるべきことは沢山あります。市民のための行政であれば、巨大な市庁舎を新築することではなく、例えば、リスクの分散化により高台に建つ学校等の現存施設を防災拠点化し、多くの尾道市民の生命を守る具体策を実現することが、最優先課題だということです。
平成27年11月3日 尾道の将来を考え会
末永 航(美術史家・広島女学院大学教授)/岡河 貢(建築家・工学博士・広島大学大学院准教授)/西河哲也(地域プランナー・東京工業大学非常勤講師)/大崎義男(尾道まちづくり市民会議 共同代表)
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